火花【電子書籍】[ 又吉直樹 ]
火花【電子書籍】[ 又吉直樹 ]

 私は毎週、大河ドラマを録画予約しているわけですが、今朝確認してみたら、何故か大河ドラマの2時間後くらいに放送しているはずの、「火花」が録画されていました。もちろん、放送時間が変更されたとかではありません。

 そう言えば少し前、MXで「Fate/stay night [Unlimited Blade Works]」を予約録画していた時も、たまに何故か、Fateではなくその1時間前くらいに放送していたアニソン番組が入っていることがありました。最初は1話くらい飛んでも良いかと思っていたのですが、あまりに頻発するので馬鹿馬鹿しくなって、結局見るのを止めてしまったのでした。

 予約録画は一度登録しておけば、放送時間の変更や拡大などに勝手に対応してくれるもの。多分それは、番組と予約内容が紐づけられているためで、今回の場合、機器の問題なのか、その紐づけにバグが生じてしまったのでしょう。
 放送が始まる前に確認すれば修正できるのですが、そもそもそうやって予約したい番組の放送時間をマメにチェックできないからこその、毎週予約機能な訳で。困ったものです。大河ドラマに関しては、土曜に再放送があるから良いけれども。

 
 前置きが長くなりましたが、意図せず録画できていた「火花」。もう散々話題になった大ベストセラー小説でありながら、どうせ何年かすればブックオフに105円で平積みされるでしょ、と読まずにきたのですが、これも何かの縁と言うことで、見てみることにしたのです。
 なおNHK版は、Netflixで配信されたものを45分に再編集したもの、ということです。Netflix版が何分だったのかはよくわかりませんが……。

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 小説などのフィクションに「お笑い」を登場させるのって、難しいと思うんですよね。
 
 例えば、漫才師が賞レースで優勝するというサクセスストーリーを書くとして、その優勝ネタ(=作中世界で「面白い」と評価されるネタ)が、読者や視聴者にとって面白いと思えるもので無かったら、それだけでストーリーに説得力が無くなってしまう。
 それは、実際にお笑いをやるにあたって、ウケるネタを作るのとは、また異質の難しさでしょう。
 
 なので「火花」で言うならば、先輩芸人・神谷が、主人公の徳永が憧れることに納得できるほどの才能の持ち主だと、こちらが感じられるかどうかが、ひとつの分水嶺になるんじゃないのかな、と思うわけです。
 実際、村上春樹書評で注目を集めたドリーさんは、小説「火花」自体は評価しつつ、作中で笑いのセンスがあるとされる神谷が、「面白くない」と酷評しているし(⇒又吉の「火花」を読んでみた・・・。)。


 そんな先輩芸人・神谷に注目しつつ、私はドラマを見始めたわけですが……。
 うーんどうだろう。1話を見る限りでは私も、神谷に芸人としての才能やセンスを感じられない。

 ただ、お祭り会場でのライブで滅茶苦茶やる姿は、破天荒ではあります(まるで面白くは無かったけど)。
 売れない若手芸人の徳永にとって、神谷のその破天荒さは、偉大な人物と尊敬するに値するものなのかもしれない。人は、自分の理解を超えた行動ができる者に、時に実像以上のものを見てしまうものだから。
 それに、浮上のきっかけを求めてもがく徳永にとって、規格外(に見える)の芸人・神谷との出会いの衝撃は、そこに運命のようなものを感じてしまってもやむを得ないでしょう。弟子入りを志願するにあたって、そうすることで何かが変わるのではないかという淡い期待に、後押しされた部分もあるかもしれません。

 それよりもむしろ、ボソボソと聴き取りづらい話し方で、打っても響かない受け答えばかりの徳永のことを、どうして神谷が気かけ続けるのか、ということの方が気になってしまいました。1話の時点では、神谷の拠点は大阪、徳永は東京という言わば遠距離師弟関係なので、簡単にフェードアウトしてしまってもおかしくないのに。


 営業先で全然客がステージ上に注目してくれない、所属事務所は小規模かつ社長も社員もお笑いの知識がまったく無い(「ネタ見せ」すら分からない)、漫才の営業と思ってスーパーのイベントに行ったら、着ぐるみを着せられ踊らされた……といったエピソードの数々は、駆け出しの芸人あるある的で面白い。
 また、どこにいてもネタをブツブツ呟きながら考え、公園で人もいるなかネタの練習をして……といったシーンや、徳永が住むボロアパートの狭い部屋なども、若手芸人の青春を垣間見ているようで楽しい。

 個人的に印象に残ったのは、序盤に出てきた、明け方の熱海の情景の美しさ。それに限らず全体的に、とても綺麗で見入ってしまう画作りになっているように感じました。

 
 全体的には、45分のテレビドラマを見ているというよりも、長編映画を冒頭から45分切り出したものを見ているような気になります。
 起伏は乏しくなだからで、1話の中に起承転結的なものもほとんど無く、静かに進む。それが純文学的な雰囲気をつくっているとも言えるけれど、退屈とも言える。
 なので、上述のような面白さを感じつつも、これをあと45分×9話見ると思うと、しんどいなぁ……という思いがまず浮かんでしまったのが、正直なところではあります。 


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