高校野球を何とかしなければ、大谷翔平の悲劇は繰り返される(野球の記録で話したい)
大谷が故障者リストに入ったことで、例によってトップ野球ブロガーの広尾さん(ただし最近はまとめブログに押されて2位に甘んじていますが)がお怒りであらせられます。
まあ高校野球が、そして甲子園が投手にとってのリスクになっていることについては、別に疑問を差しはさむ気はないですし、改革が必要だというのも同意しますが(具体的にどうすべきかについては、これまでの高校野球記事で色々と触れてきたので、いずれまとめてみたいと思います)。
しかし、そもそも投手の故障の背景には、様々なリスクが関わってくるわけで、高校野球がそのなかでどの程度のウェートを占めているのか。
広尾さんの記事を読むと、高校野球が諸悪の根源と言わんばかりですが、それならMLBとNPB、あるいはKBOやCPBLなども含めても良いですが、そうしたなかで投手の故障発生率に大きな違いがあったりするのでしょうか。
そしてMLBの特色……中4日ローテ、ボールの質や気候、NPBより多い試合数と過密日程、過酷な移動などは、日本の高校野球のリスクと比べてどうなのでしょうか。
もっとも大谷の場合、中4日はありませんが、代わりに二刀流というまた別のリスクを負っているわけですし。加えてあの速球も肩肘には負担になるでしょうし。
それを思うと、大谷の故障の要因が、全て高校野球にあるような言い方はどうなのでしょうね。
そもそも大谷は、高校野球の酷使のモデルケースとしてはあまり適当でないように思います。
大谷の高校時代のエピソードとして、2年時には成長痛の影響もありあまり投げられなかったのはわりと有名な話。
また、甲子園のマウンドに登ったのは、2年夏の帝京戦(5.2イニング)と3年春の大阪桐蔭戦(8.2イニング)の2試合だけしかありません(制球難もあり、後者は173球投げているが……)。
そして今回これを機にネットでわかる範囲で公式戦の成績を拾って見たのですが、ドラ1クラスの投手としては驚くほど投げていない印象を受けます。
詳細は最後に載せますが、最も投げたと思われる3年夏の岩手県大会(決勝戦敗退)でも、6試合中4試合に登板し、投球回数は18.1だけです。
予選参加校数やチーム事情にもよるものの、一般的にエースクラスなら30イニング近くは投げるでしょうか。同じ年の藤浪なら、8試合中4試合に登板して30.1イニング。ただ、強豪校の場合、予選の前半は控え投手に任せることも多いもの。そして藤浪はその後の夏甲子園で36イニング投げています。
まあ、そんなに投げていない大谷ですら怪我をするんだから、他の投手なんて尚更……!ということかもしれませんが。しかし、それならMLBに比べてNPBの投手陣は死屍累々なのか……というとそうでもないわけで。
NPBの投手が、MLBに行くとたいてい故障すると言っても、渡米してから怪我してるんだから、高校野球だけを全ての原因のように書くのはフェアではないように思いますが。
でも投手の負担を軽減するには、どうしたって投手の数が必要になってくるわけで。
高野連の改革が遅々として進まないのなら、そういう私学が豊富な選手層による継投主体のチームを作り上げていくことが、とりあえず当面の、現実的かつ即効性のある負担軽減だと思うのですが、そのあたりはどうなんでしょうか(もちろん大量に部員を抱えていても、結局エース偏重になってしまうチームもあるが……)。
そんなの知らん、とっとと高野連が抜本的な改革をすれば良いんじゃい! ってことかもしれないけど……。
【参考資料】大谷の公式戦全登板と投球回数
・データの参照元
バーチャル高校野球……夏の選手権大会予選、秋県決勝以降。
高校野球info……春季大会(県大会準決勝・決勝、東北大会)、秋季大会(県準決勝)
前述の日刊スポーツの記事……甲子園2試合。
※投球回に関しては選手権は確実。春秋大会については確認できないものが多いため、完投していればその試合のイニング数(コールドもあるので9回とは限らない)をそのまま入れるなどして埋めています。
個別の試合についてスポーツ新聞や地方新聞などの記事を探せば、もう少し埋められるかもしれないのだけど、そこまでやる気力はないです。
・2010年
※9/25の一関学院戦は、完投かつサヨナラ負けなので、9.0~9.2回のいずれか。
・2011年(一部12年含む)
※春季東北大会は中止
※9/23-9/27については、wikipediaの秋は治療に専念し、試合には打者限定で出場、という記述に拠った(大事な県決勝~東北大会を投げていないので、間違いないと思うが)。
・2012年
……ということで分かる範囲では、最後の春夏くらいしか、公式戦ではまともに投げていません(その夏も、一般的なエース投手に比べれば少ない方だと思いますが)。ただ、高校時代の大谷の制球を考えると、イニング以上に投球数は嵩んでいるかもしれない。
あとは?のゾーンくらいですが、1年春はそこまで投げているとは思われないので、一定数以上に投げているかもしれないのは、1年秋~2年春、3年春の県大会の空白くらいでしょうか。
もちろんこの試合以外にも、強豪・花巻東なので、たくさんの練習試合など非公式戦をこなしているとは思いますが。とはいえ公式戦より練習試合で多量に投げさせられているとは考えづらいので、総合的に見て、大谷は一般の強豪のエースに比べ消耗させられていないと言って良いのではないでしょうか。
表に間違いがあったらごめんなさいね。見つけたら、お前は広尾か!とツッコんでくれれば幸い。
……というような記事を書いて今朝投稿したのですが、12年の春季大会がまるっと抜けていたので一旦削除し、今こうして改めて上げ直しております。
その間にまた続編的な記事も出て、例えば日本の野球の様々なステージを比較する記事にて(太字筆者)、
とか書いてるのですけど、あーた、そもそも大学、社会人野球に詳しいんかいな。
(というかこれだと、「健大高崎式」を認めるってことで良いんですかね……)
終末の2日だけっていうけど、1勝1敗なら3連戦もあるわけで。しかもシーズン中は、それが毎週末あるわけで……。
(6/11追記:コメントされて気付いたが、勝ち点制のあるリーグの場合、1勝1敗1分なら4連戦もあるのか。いずれにせよ「週末の2日だけ」とか何呑気なことを言っているんだって話だ。)
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大谷が故障者リストに入ったことで、例によってトップ野球ブロガーの広尾さん(ただし最近はまとめブログに押されて2位に甘んじていますが)がお怒りであらせられます。
まあ高校野球が、そして甲子園が投手にとってのリスクになっていることについては、別に疑問を差しはさむ気はないですし、改革が必要だというのも同意しますが(具体的にどうすべきかについては、これまでの高校野球記事で色々と触れてきたので、いずれまとめてみたいと思います)。
しかし、そもそも投手の故障の背景には、様々なリスクが関わってくるわけで、高校野球がそのなかでどの程度のウェートを占めているのか。
広尾さんの記事を読むと、高校野球が諸悪の根源と言わんばかりですが、それならMLBとNPB、あるいはKBOやCPBLなども含めても良いですが、そうしたなかで投手の故障発生率に大きな違いがあったりするのでしょうか。
そしてMLBの特色……中4日ローテ、ボールの質や気候、NPBより多い試合数と過密日程、過酷な移動などは、日本の高校野球のリスクと比べてどうなのでしょうか。
もっとも大谷の場合、中4日はありませんが、代わりに二刀流というまた別のリスクを負っているわけですし。加えてあの速球も肩肘には負担になるでしょうし。
それを思うと、大谷の故障の要因が、全て高校野球にあるような言い方はどうなのでしょうね。
大谷の高校時代のエピソードとして、2年時には成長痛の影響もありあまり投げられなかったのはわりと有名な話。
また、甲子園のマウンドに登ったのは、2年夏の帝京戦(5.2イニング)と3年春の大阪桐蔭戦(8.2イニング)の2試合だけしかありません(制球難もあり、後者は173球投げているが……)。
そして今回これを機にネットでわかる範囲で公式戦の成績を拾って見たのですが、ドラ1クラスの投手としては驚くほど投げていない印象を受けます。
詳細は最後に載せますが、最も投げたと思われる3年夏の岩手県大会(決勝戦敗退)でも、6試合中4試合に登板し、投球回数は18.1だけです。
予選参加校数やチーム事情にもよるものの、一般的にエースクラスなら30イニング近くは投げるでしょうか。同じ年の藤浪なら、8試合中4試合に登板して30.1イニング。ただ、強豪校の場合、予選の前半は控え投手に任せることも多いもの。そして藤浪はその後の夏甲子園で36イニング投げています。
まあ、そんなに投げていない大谷ですら怪我をするんだから、他の投手なんて尚更……!ということかもしれませんが。しかし、それならMLBに比べてNPBの投手陣は死屍累々なのか……というとそうでもないわけで。
NPBの投手が、MLBに行くとたいてい故障すると言っても、渡米してから怪我してるんだから、高校野球だけを全ての原因のように書くのはフェアではないように思いますが。
それと広尾さんは、私学強豪校が多くの部員を抱えるのは嫌いなんでしょ(健大高崎とか批判してたよね)。
高野連の改革が遅々として進まないのなら、そういう私学が豊富な選手層による継投主体のチームを作り上げていくことが、とりあえず当面の、現実的かつ即効性のある負担軽減だと思うのですが、そのあたりはどうなんでしょうか(もちろん大量に部員を抱えていても、結局エース偏重になってしまうチームもあるが……)。
そんなの知らん、とっとと高野連が抜本的な改革をすれば良いんじゃい! ってことかもしれないけど……。
【参考資料】大谷の公式戦全登板と投球回数
・データの参照元
バーチャル高校野球……夏の選手権大会予選、秋県決勝以降。
高校野球info……春季大会(県大会準決勝・決勝、東北大会)、秋季大会(県準決勝)
前述の日刊スポーツの記事……甲子園2試合。
※投球回に関しては選手権は確実。春秋大会については確認できないものが多いため、完投していればその試合のイニング数(コールドもあるので9回とは限らない)をそのまま入れるなどして埋めています。
個別の試合についてスポーツ新聞や地方新聞などの記事を探せば、もう少し埋められるかもしれないのだけど、そこまでやる気力はないです。
・2010年
※9/25の一関学院戦は、完投かつサヨナラ負けなので、9.0~9.2回のいずれか。
・2011年(一部12年含む)
※春季東北大会は中止
※9/23-9/27については、wikipediaの秋は治療に専念し、試合には打者限定で出場、という記述に拠った(大事な県決勝~東北大会を投げていないので、間違いないと思うが)。
・2012年
……ということで分かる範囲では、最後の春夏くらいしか、公式戦ではまともに投げていません(その夏も、一般的なエース投手に比べれば少ない方だと思いますが)。ただ、高校時代の大谷の制球を考えると、イニング以上に投球数は嵩んでいるかもしれない。
あとは?のゾーンくらいですが、1年春はそこまで投げているとは思われないので、一定数以上に投げているかもしれないのは、1年秋~2年春、3年春の県大会の空白くらいでしょうか。
もちろんこの試合以外にも、強豪・花巻東なので、たくさんの練習試合など非公式戦をこなしているとは思いますが。とはいえ公式戦より練習試合で多量に投げさせられているとは考えづらいので、総合的に見て、大谷は一般の強豪のエースに比べ消耗させられていないと言って良いのではないでしょうか。
表に間違いがあったらごめんなさいね。見つけたら、お前は広尾か!とツッコんでくれれば幸い。
◆ ◆ ◆ ◆
その間にまた続編的な記事も出て、例えば日本の野球の様々なステージを比較する記事にて(太字筆者)、
大学野球も高校野球に比べればはるかに楽な環境だ。公式戦は春秋、週末の2日だけ。年間最大で30試合程度。そして部員数は高校よりもはるかに多い。もちろん登板過多を強いる指導者もいるが、全体としては投手の酷使は少ない。社会人も同様だ。社会人野球はプロを目指す投手も多いので、過酷な登板は行われない。
とか書いてるのですけど、あーた、そもそも大学、社会人野球に詳しいんかいな。
(というかこれだと、「健大高崎式」を認めるってことで良いんですかね……)
終末の2日だけっていうけど、1勝1敗なら3連戦もあるわけで。しかもシーズン中は、それが毎週末あるわけで……。
(6/11追記:コメントされて気付いたが、勝ち点制のあるリーグの場合、1勝1敗1分なら4連戦もあるのか。いずれにせよ「週末の2日だけ」とか何呑気なことを言っているんだって話だ。)
私の知る範囲だと、東洋大最終年の原樹理とか、凄いことになってたぞ。完投完投また完投って感じで。まあそれは、「一部の指導者」って言うのかもしれないけれど。
それに大学のリーグ戦と違って、高校野球の公式戦は基本負けたら終わり。実際上の表を見れば分かると思うけれど、年間30試合どころか、20試合行くか行かないかでしょ。
大阪とか神奈川みたいな激戦区で、春夏秋の県予選を全て勝ち抜くくらいで、ようやく30試合の大台が見えてくる……って感じじゃないのかな。
加えて、かなりの実力差のあるチームと対戦することもある(=投手は楽に投げられるandコールドも起きやすい)高校野球に対し、大学野球のリーグなどはある程度実力は均質で、単純な試合数の比較では測れない部分もあるだろうし。
もちろん非公式戦もあるけれど、それは大学だって同じこと。
そのへんを鑑みると、大学や社会人野球が、高校野球に比べて「はるかに」楽っていうのは、本当にそうなのかな?って思ってしまうけれども。
あと、高校球児の甲子園への熱量が凄いのはもちろんだけど、それ自体は高校生に特有のものなのかなって。
いつだったか見た都市対抗ダイジェストで、投手が連投したことについて、渡辺俊介が都市対抗なんだからあの場面は当然行きますよ、みたいなことを取材にコメントした、みたいな回があったのを記憶しています。
甲子園が特別なのは外部の人間への浸透度であって、大学生や社会人だって大会の勝利に対する熱量は、甲子園とそんなに違わないんじゃないですかね。
それに大学のリーグ戦と違って、高校野球の公式戦は基本負けたら終わり。実際上の表を見れば分かると思うけれど、年間30試合どころか、20試合行くか行かないかでしょ。
大阪とか神奈川みたいな激戦区で、春夏秋の県予選を全て勝ち抜くくらいで、ようやく30試合の大台が見えてくる……って感じじゃないのかな。
加えて、かなりの実力差のあるチームと対戦することもある(=投手は楽に投げられるandコールドも起きやすい)高校野球に対し、大学野球のリーグなどはある程度実力は均質で、単純な試合数の比較では測れない部分もあるだろうし。
もちろん非公式戦もあるけれど、それは大学だって同じこと。
そのへんを鑑みると、大学や社会人野球が、高校野球に比べて「はるかに」楽っていうのは、本当にそうなのかな?って思ってしまうけれども。
あと、高校球児の甲子園への熱量が凄いのはもちろんだけど、それ自体は高校生に特有のものなのかなって。
いつだったか見た都市対抗ダイジェストで、投手が連投したことについて、渡辺俊介が都市対抗なんだからあの場面は当然行きますよ、みたいなことを取材にコメントした、みたいな回があったのを記憶しています。
甲子園が特別なのは外部の人間への浸透度であって、大学生や社会人だって大会の勝利に対する熱量は、甲子園とそんなに違わないんじゃないですかね。
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ご意見ご感想その他はコメント欄からどうぞ。Web拍手の方はコメント機能は無くなってしまいましたが、拍手だけでも喜びます。
http://ltfrankc.hatenablog.com/
甲子園より露出度が低いせいか目立ちにくい(H氏のような目立ちたがり屋には文句を言われにくい)ですが、部員数の割には一部投手に負担が集中しています。
中には巽真悟や大隣憲司のように、監督の配慮で4年秋の登板数を減らされる投手もいます。しかし自分の印象では、大体は頼れるようになった投手を潰れるまで使い倒すのが基本に見えます。
2勝するまで延々続ける勝ち点制、秋の神宮をかけたトーナメント、(リーグによっては)入れ替え制と重なって、高校野球顔負けの酷使だと思います。
軟式や社会人、ソフトボールも含め、ほとんどの高校野球の投手酷使批判家は、金にもアクセス数にもならないから触れない暗部ですね。
「成人してるから(18歳以上だから)セーフ」と言い訳する人がいるかもしれませんが、労働問題は成人を対象としているのだから、起用方法も成人か否かは関係ないんですがね。
長文失礼しました。